概要は, 順次更新します

1. 図斎 大(関西学院大学)

タイトル:”Evolution of cooperation under voluntary team formation in linear division of labor” (joint with Mayuko Nakamaru)

概要:

中丸による「線形分業」に関する一連の論文(2018, JTB; 2023, RSOSなど)では、フラットなネットワークではなく、サプライチェーンや職場の上下関係のように、ヒエラルキーのあるチームにおける、戦略的な協力を考えています。本研究では、このモデルを、チームの維持・形成とチーム内での協力を関連付けるために、エージェントが多数いる大きな社会へと拡張させます。このようなモデルで、エージェント間のリンク形成と協力行動を戦略的に内生化するのみならず、エージェントのポジションで戦略がどのように変わるのかを見ています。

目標としては、社会が流動化しサプライチェーンや会社組織への忠誠が自明でなくなる中、協力的であることへの上下のポジション間での違いを明らかにしようとしています。流動的な社会での2者間の協力関係の維持に関しては経済学での繰り返しゲームの理論で均衡の解析的分析がなされていますが、本研究ではヒエラルキーを持ち複雑な構造を持つモデルゆえに数理生物学での進化ゲーム理論にのっとり、均衡に至るまでの動きをシミュレーションで描写し定量的に分析します。この講演では数理生物学と経済学における既存モデルの概説、そして我々のモデルからこれまでに得た結果を紹介いたします。

2. 翁長 朝功(九州大学)

タイトル:「ネットワークゲーム理論:最適反応ダイナミクスの解法」

概要:ゲーム理論は, 複数の主体が意思決定を行う場合に行動結果を分析するフレームワークとして、経済学、政治学、工学などの分野で広く利用されている。なかでも、ネットワーク構造を持ったプレイヤーからなるゲームは、ネットワークゲームと呼ばれ、近年研究が進展している。しかしながら、 プレイヤー数が大きい場合に、解(ナッシュ均衡)を具体的に求める方法はあまり知られていない。 我々の研究では、ネットワーク科学とスピングラス理論を利用して、解を求めることができた。講演の中では、量子コンピュータによって、研究が進展する可能性があることについても触れたい。

3. 藤本 悠雅(総研大, サイバーエージェント)

タイトル:「私的評価の間接互恵における協力の理論解析」

概要:間接互恵は人間社会のような大規模社会における協力を説明するメカニズムである。そこでは、個人が相手の評判に基づいて他者に協力するかどうかを選択し、自身はその行動の善し悪し(good, bad)を他者に評価される。どのような評価ルール(social normと呼ばれる)の下で協力が維持できるかが、分野の中心的な問題である。各個人の評価を全員で共有できる公的評価(= public reputation)の状況では、leading eightと呼ばれる8つのsocial normが協力を維持可能であることが知られている。

一方、現実社会では、個人の評価を共有できない私的評価(= private assessment)の状況が見られうる。このとき、他者に対する評価の食い違いが拡散することにより、集団内で正しい評価ができなくなってしまう。ゆえに、私的評価でも協力が維持できるかについては疑問が残る。我々はこの問題に対し、私的評価の下での集団における評判構造を分析する新しい方法を構築する。具体的には、各個人をgoodness(集団の何割がその個人をgoodと考えるか)とself-reputation(個人が自身をgoodと考えるかbadと考えるか)という2つの変数で特徴付け、この2つの変数が時間とともにどのように変化するかの確率過程を分析する。さらに、無条件に協力する者や無条件に裏切る者の侵入に対する頑健性に基づいてleading eightの社会規範の進化的安定性を議論する。面白いことに、公的評価では同じ性能を発揮するleading eightは、その協力率や進化的安定性により、私的評価では3つのクラスに分かれることが明らかになった。さらに、私的評価の中で高い協力率を維持するためには、他者の評価についてのコンセンサスを個人間で維持するために、normがある種の寛容性を持っている必要があることが明らかになった。

参考文献:

Fujimoto, Y., & Ohtsuki, H. (2024). Who is a Leader in the Leading Eight? Indirect Reciprocity under Private Assessment. PRX Life, 2(2), 023009.

Fujimoto, Y., & Ohtsuki, H. (2023). Evolutionary stability of cooperation in indirect reciprocity under noisy and private assessment. Proceedings of the National Academy of Sciences, 120(20), e2300544120.

Fujimoto, Y., & Ohtsuki, H. (2022). Reputation structure in indirect reciprocity under noisy and private assessment. Scientific Reports, 12(1), 10500.

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4. 一ノ瀬 元喜(静岡大学)

タイトル:「ゼロ行列式戦略とその可能性」